椰子砂糖と天然塩を求めて

こんにちは、古谷です。バリ島ウブド近郊よりお送りしています。

この1週間、本当に良い天気が続いています。朝6時半頃に日が昇り、ひんやりとても爽やかです。

朝日とアグン山。田んぼの見回りをしている農家の方が見えますね。

先日、生島がウブドから東へ1時間弱、昔はバリの王朝があったクルンクン近辺に『Gula Merah(椰子砂糖)』を作っている村がある、との情報をベビーシッターKetutさんから聞き出し、それじゃ早速行ってみよう!となりました。

Ketutさんのお宅(クルンクン在住)に子どもを預け(息子は以前何度かこちらにお泊まりした事があるほど)、ご主人にその村の入り口までバイクで先導して頂きました。(途中、夫婦で話に夢中になり、先導して下さっているのを
すっかり忘れてご主人のバイクを追い越してしまいました!)

村への入り口にあたる路地でご主人と別れ、のどかな村の小道を進みます。

天気も良く、青空が広がる中、私たちの暮らす近辺ではあまり見慣れない景色に『いいねぇ~』と言いながら、小旅行でもしている様な気分に。

以前同じような気分で夫婦で盛り上がったな、と思い返してみると、一人目の子どもを妊娠中に、二人だけで今のうちにどこか旅行へ行こうと、四国の祖谷渓温泉に行きまして(また行きたいなぁ)、 道中やはりのどかな小川が流れる風景があったんですね。その時に生島がうわぁ~きれいぃ~と、『は~るのぉ~うらぁ~らぁ~のぉ~♪』なんて歌い始めた直後にその小川にゴミが思いっきり溜まっていまして、『すぅ~みぃ~だぁ~♪、あ゛っ!きたねぇ!』と思いっきり旅行で昂揚した気分をくじかれた思い出が甦りました。あれはあれで楽しかったのですが。

先導して頂いたご主人と別れて、この小道を進みます。周りの緑と青い空、白い雲(なんだか小学校国語の教科書みたいだな)が爽やか!
景色を楽しみつつ、車はゆっくりと村の奥へ

『この道進むと、グラメラ作っている村に入りますから、またそこで誰かに聞いてみて下さい』と言われていたので、早速ワルンのお母さんに『この辺りにグラメラ作っている場所はありますか?』と聞いてみます。

『ここいらではもう殆ど作ってないから、もっと奥の村で聞いてみて』との事で、さらに奥へ奥へと進みます。

途中、村人が大勢でお寺の改修工事をされていたので、お忙しい所すいません!と先程と同じ質問を。

『もう少し奥へいった辺りに小さい路地があるからそこを左に入って突き当たりだよ』と丁寧に教えて頂き、さらに進んでいくものの、その目印となる場所が分からず、さらに奥へ進んで一つのワルンでまた質問。

すると、偶然にもワルンのお兄さんの自宅で作っているよ!との事。おおついに!と車を路肩に駐車してお兄さんの後をてくてくとついて行きます。

ついにグラメラの制作現場へ!あ、たわわに実ったパパイヤが。

お宅の入り口に見たことのある木が。おぉ!これはチョコレートやココアの原料になるカカオ!!

初めてカカオの木を見ました。

お庭に入ると、カカオの皮をひたすら剥いて、中の種だけをバケツにほ放り込んでいます。

実を割って中の種だけを出しています。

種の周りには白くて薄い、まるでマンギス(マンゴスチン)の様なふわりと甘い繊維質の果肉がついていました。ほんのり甘く、5粒ほど食べましたが、なにせ薄いのであまり食べた、という気分になるものではありません。

この種を3日間ほど乾燥させてから、車で回収に来る方へ売るそうです。

と、ここへ来て、そうだ我々はグラメラを探しに来たんじゃあないか!と本来の目的を思い出し、で、グラメラはどこで?と尋ねると、あぁ、こっちこっちと指さす先は、通常のバリ家庭にある台所。

私達はバリの家の敷地内にあるとしても、グラメラ作りの小屋みたいなものを想像していたので、これは完全家内制手工業だ、と妙に感心。

一眼では暗くて撮影出来ず、急遽携帯で撮影、画質荒くてすいません。大きな平たい鍋で煮詰め中のグラメラ

煮詰め始めて3~4時間煮詰めて、完成するそうです。

グラメラはいったいどうやって作られるのか?とても知りたかったので、『ココナッツの液体を煮詰めるんですか?』と聞いたところ、いや、あれがああなってこうして、と説明して下さるのですが、私の語学力が足りず、いまいち通じず。

ただ、ココナッツ(椰子)ジュースの、あの椰子の実の中にある液体では無いことは確か。

よ~く何度も聞いて言葉変えたりして話すと、椰子の木のある部分を切り、そこから出る液(Tuak=トゥアック)を煮詰めるのだそうです。

あれ?トゥアックってあの酒のトゥアックですか?と聞くと、そうそう、それだよ。との返事。

トゥアックを蒸溜すると、アラックになります。バリでは最もポピュラーなお酒です。

初めてバリ島に来た時、お世話になっていた方の家で働く職人さん達が、このトゥアックが取れる村出身でよく田舎に帰ってはお土産でこのトゥアックを飲ませてもらいました。

ほんのり甘いのですが、時間が経つと発酵して酸っぱくなってしまうのを覚えています。

作り方がやっと分かり、では早速椰子の木を見に行こうと家の敷地内からすぐ隣の椰子の木や果物の木がなる敷地へ。

椰子の木に引っかけて、トゥアックを採取する道具。
さて、この液体はいったい何でしょう?

こちらの画像上部に木片が見えます。この木は『nanka(ナンカ=ジャックフルーツ)』で、画像中央の貯められた水に漬けてあります。あと1種類入れてるそうなのですが、これ残念ながら最後まで分かりませんでした。

で、この液体をトゥアックを採取する入れ物に、椰子の木に引っかける前に少し入れるのだそうです。

なんでこの液体を?

それは、この液体を入れないと、グラメラにならないのだそうです。それにしても先人達はどうやってこの様な方法を確立したのでしょうか?

私達も味噌や醤油を作りながら、どうやってこんな方法を思いついたのか、とただただ感心するばかりです。

現在トゥアック採取中

1日2回、朝と夕方に採取するのだそうです。なので24時間採取し続けているんですね。

朝、前日夕方に取り付けた入れ物を降ろして、空の入れ物を設置夕方は朝に取り付けたものを降ろして、翌朝取るための入れ物を設置。

『今度はその仕事を見せてあげるから、朝7時か午後3時に来てよ』、と言われ、『では午後3時に!』と即答する私達。

奥さんと子どもさん。ご主人はもともとクタでドライバーをしていたが、2002年の爆弾テロ事件の影響で仕事が無くなり、田舎に戻ったんだそう。

『昔はこの辺りは皆グラメラ作ってて、バリではここがグラメラ作りの中心地だったんだ。でも今は皆出稼ぎに行ったりして生活に困らない程度の暮らしが出来るようになった。だから皆こんな手間のかかる仕事はしたく無いんだよ』とご主人がこの地域の現状を教えてくれました。

『ではまた水曜日に来ます!』と分かれて、私達夫婦はお腹を空かせてゴア・ラワ近くのサテ・イカン(魚の串焼き)が美味しい『Mertha Sari』へ。 こちらは旅行者の方にも人気ですね。

クルンクンまで来たら、ここでお昼を!

年に2回くらいしか来る機会が無いのですが、もう溜まらなく好きです。ここのサテ!

辛いんですが、ごはんが進みます。ご覧下さい、食べることに夢中になり、あ、写真!と気がついたときには全ては彼女の口と胃袋の中に。。。。もちろん私もガツガツ食べましたが。

どんどん立派になっていくお店

初めて来たのは何年前だったか、当時はこんなに広くなかったと記憶しています。

お客さんも次から次へといらっしゃり、どんどん入れ替わっていきます。

ローカルのお客さんの来ている服を見ると、バリも生活水準が上がってきているのかな、と思うばかり。

がっつりお昼を頂いた後は、クサンバで味噌や醤油作りに使う天然塩を買いに。

トイレから出てくる生島。心付け箱にお金を入れる所

着くなり『トイレトイレ』と生島。出てきた後、黄色い服着た小さい子を見ながら苦笑い。

どうやら彼女が先客だった様で、水を流していなかったらしい。

トイレの先客

ちょうどお昼過ぎ、日差しがきつい中、塩田の奥にある塩作り小屋へ。

クサンバの塩田と海

昨年秋に来た時、ちょうどお父さんが怪我をしてしまって、お母さんひとりで『あぁ~大変だぁ~!』と嘆いていたのですが、今回はお父さんも復活して元気な顔を見せてくれました。

キラキラと輝く天然塩
浜で取れる小石

初めてこの小石を見たときは、何か塩作りで使うものなのかな?と思ったら、庭石に使われるそうで、大事な収入源の一つなのだそうです。

おかあさんの背中

40キロ買いたい旨を伝え、袋を取りに行くお母さん。最近老けてきたな、と思いつつも20キロくらいは平気で頭に載せて冗談言いながら歩きます。恐れ入りました。

塩を結晶化させている所。真水を竹のハケを使って振り入れています。
塩の結晶
木陰の休憩所。私達が到着した時、お父さんはここでくつろいでいました。
浜に停泊している船。朝には沢山の人や荷物を積んでプニダ島へ行き来します。
塩田を竹製のレーキ(とんぼ)でならす女性
地ならしをするレーキ(とんぼ)は竹製

がっさがっさとバケツに塩を入れては持ち帰り袋に入れていくお母さん。生島もお手伝い

塩入れのお手伝い

いつもの世間話はお互いの家族の事。息子さんは今、北海道にいらっしゃるそうで、先日数年ぶりにバリへ来られたそうです。

この様に20キロはある塩の袋をヒョイっと持ち歩くお母さん。

おかげさまで、また美味しい味噌や醤油が仕込めます!

ベビーシッターKetutさん家に戻ると、子ども達が家の外で待っていました。どうしても息子を泊めさせたいらしく、何度も『今夜は泊まるよね?ね?』と聞いていましたが、息子は珍しく首をヨコに振って『おうちに帰る』といいました。

こうして我が家の椰子砂糖と天然塩をめぐる小旅行は終わったのでした。

また近日中に椰子砂糖の採取光景を見に行って参ります!

古谷 悟