sisiファミリー。

 週に2度程は布を買いに行ったり職人さんの家に行ったり、と「デンパサール」へ行きます。

バリはインドネシアの中の州のひとつでデンパサールはその「州都」なのです。観光のお客さんはあまり行く機会が無いかもしれませんが、観光地とはまた違った「バリ」を見る事が出来ます。

 中心の市場の辺りはとにかくいつも人がいっぱいで皆、忙しそうに働いています。市場に行き来するお客さんと売り手の人達の熱気でここは温度が少し高い様に思います。その勢いにいつも少し圧倒されながらもこちらも負けない様に頑張らねばなりません。

*ニョマンのおうちの前のスンバヤン(お祈り)の台。

 この日は市場の方には行かず、sisiのホームページで紹介する写真を撮ると言う事もあり、職人さんの家でゆっくり打ち合わせをしました。

『sisiバッグ』(バッグの他にもいろいろありますが)は本当に笑ってしまう程「手作り」のゆっくりした工程で作られています。小さい工房やお店で選んだ布をバイクで運び、職人さんに手渡す。 オーダーバティックは色見本とデザイン画を工房に持って行き、チャップと呼ばれる金属の型を作り、そこからサンプル作りに入ります。 天候によって仕上がって来る期間や色目がどんどん変わって行く、と言う楽しい様な、恐ろしい様な事が常に起こって来ます。 インドに布の工房を訪ねて行く事もあるのです。 糸から染めてもらい、木製の手織りの機械でパタン、パタンと1日2mずつ織ってもらう事もあります。

 それらの工程もバリの『伝統行事』があればすぐに作業中断。 2、3日、長い時には4、5日お休みに入ってしまう事もあります。イスラムの断食月に入るとそれこそ1週間程お休みになる場合があります。(その際はヒンドゥー教徒の多いバリ人の職人さんやお店はあまり影響ありません。)多くの布屋さんはイスラム教徒で布の制作はジャワで行われて居る事も多く、この時期をすっかり忘れていると大変な目に遭います。(納期がぐーんと遅れたりするので。)

 バリでは「お祭り」の類いをまとめて「ウパチャラ」と呼ぶのですが、こちらがどんなに急いでいても「ウパチャラがあるので休みます」と言われると、私たちは「そ、そ、そそうか」と言うしかありません。 それを「ウパチャラがなんだ!この忙しい時に!頑張ってよ」と言おうものなら、もうこの島ではやって行けないに等しい結果になって行くのです。

 私たちがお金を支払い、彼らは労働で返してくれている。 お互い出来ない形で助け合っている。更に私たちは外国人で、このバリに「お邪魔している」と言う感覚を常に持っておかなくてはならないな、と思っています。 とは言え、「どうぞどうぞ」と言うスタンスだけではやっていけないのも現実。 その辺のバランスが大切なんでしょうね、どこの土地でも。

 そんなバリですでに10年近くの付き合いをしている職人ニョマン一家。

彼が居なかったらsisiは無いだろう、といつも思っている程大切な大切な人です。バリでは「奇跡」と言える程の仕事をいつもしてくれ、仕事以外にも色々相談に乗ってくれたり心配してくれたりする優しい人です。

 話は戻りますが「本当にひとつひとつゆっくり作っているsisiバッグ」。こうして彼らの手に渡った布はニョマンの手によって裁断され、(ニョマンの手にはいつも裁断で出来る大きなマメがあります。)ニョマンや奥さん、そして近所の職人さんたちの手によってバッグの形になって行きます。 表面の布をバッグの形に縫い、同じ様にポケットをつけた内布を縫い合わせて行く。 それから写真の様にデニムの持ち手を付けて行きます。 デニムの持ち手を切るのはニョマンや息子、親戚の男の子の仕事。「昨日は500個分の持ち手を一気に切ったよ!」とニョマンが教えてくれました。

 時間のある時は少し作業を見て行くのですが、順々にカバンになって行く様子が気持ち良い。職人さんって言うのは本当にすごいな、と感心するばかりです。

 最後に丸い木の『まな板』の様なものの上でハンマーを使ってマグネットボタンをひとつずつ付けて行きます。 カタカタカタ、ダダーというミシンの音とトントントンというリズミカルなハンマーの音が響きます。

 バリにいらっしゃったお客様が「sisiの工房を見せて下さい」と言って下さる事があるのですが、きちんとした工房を構えている訳では無く、このニョマンのデンパサールの家の半分を占めている『作業場』がその場所です。 彼は「タバナン」というバリ島西部の方の出身で、そこに家があり、このお家は仮の家、でもあります。 とは言え、一年の9割はここに居る様ですが。

通りから小さな小道(Gang(ガン)と言います。)を入ったところは案外広く、小さなニョマンの様なお家がたくさん集って小さな集落の様になっています。そこは皆ニョマンの様にそれぞれバリの遠方から来て仕事の為に仮住まいしている人達です。 いつも子供達がたくさん楽しそうに遊んでいます。この日も皆で凧揚げをしていました。

 のの果を初めてここに連れて来たのですが、大人も子供もこれ以上無い嬉しそうな顔で迎えてくれました。 

「こっちにおいでー」

「一緒に遊ぼう!凧みる?」

「小鳥が居るよ!」

と声をかけてくれるんですが、最初は圧倒されて「イヤー、イヤー」と私にしがみついていましたが、ピサンゴレン(揚げバナナ)につられて抱っこされてしまう食い意地のはった娘。。。

 近所に住む職人さん達も出て来て挨拶してくれます。刺繍やスパンコールを付けてくれている職人さんにも少し久しぶりに会いました。いつも丁寧な仕事をありがとうございます。

 仕事の話は案外すぐに終わったのに、そこからニョマンと家族は手を休めてとにかくのの果を構いたい様で、このまま居ると、邪魔するだけ。1時間程遊んで帰る事にしました。

 最後に記念撮影を、と思ったのですが、調子に乗った娘があっちへ行ったりこっちへ行ったり!

皆で笑いながら最後はちゃんと撮れたかな? また近いうちにのの果を連れて遊びに来ないと駄目ですね。